PhantomX固定ブラケット PXBKT-AES 説明書

PhantomXを固定するブラケット (X68000 ACE/EXPERT/EXPERT2/SUPER用) 「PXBKT-AES」の特徴や使用方法を説明する公式マニュアルです。本品はBOOTHショップのmcafe工房で頒布しています。

 

本品の特徴

・PhantomXを固定して脱落を防止します。
X68000メイン基板を本体から取り外さずにPhantomXを取り付けられるかもしれません。(リスクがあります。下記)
・リロケータとベースボードをX68000に固定したままRaspberry Piだけを取り外せます。
Raspberry Piを冷却するための40mmファンを取り付け可能です。
・使用材料はPLA+で、通常のPLA (ポリ乳酸) よりも靭性が高くABSに近い耐衝撃性があります。

注意事項:必ずお読みください

・本品はユーザー様ご自身でサポート材 (3Dプリンター で造形する際に作られる土台) を除去していただきます。

・本ブラケットは、メイン基板を本体に付けたままPhantomXを取り付けられるように留意して制作しました。それでも取り付けの際にPhantomXのリロケータ (白い基板) のピンを目視できないため位置調整が難しく、無理にソケットに押し込もうとするとリロケータのピンを折ってしまうリスクがあります。下記手順を守ってもリロケータの位置調整がうまく行かない場合は、メイン基板を本体から取り外す方法に切り替えてください。

・本品は家庭用FDM方式3Dプリンターで製造しているため、多くの場合造形に以下のような欠点があります。糸引き、積層痕の不揃い、小さな隙間や凹凸、変形、変色、プリンター部品摩耗片の混入など。機械的機能が損なわれない程度なら出荷対象としています。

セットの内容

・ブラケット本体
・ステーA
・ステーB
・ねじ、ワッシャー類

ねじ、ワッシャー類の内訳

1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・6個
4) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・2個
5) バインド B-1タッピングねじ 3 x 12mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・3個

Tips: ねじの頭が少し平たいのが「バインド」、丸っこいのが「なべ」です。
「B-1」は、ねじを切り進むための切り欠きがある強力タイプのタッピングねじです。
Caution: タッピングねじをねじ込む相手は金属よりはるかに弱い樹脂ですので、強く締めすぎないようにします。

必要工具

・プラスドライバー2番 (3mmねじ用)
・プラスドライバー1番 (2.6mmねじ用)
・ラジオペンチ、カッターナイフ、棒やすり等 (サポート材除去に使用)
・輪ゴム (糸引きがある場合に使用)

サポート材の除去方法

ラジオペンチでサポート材を掴んで引き剥がしていきます。黒くマークされた箇所は出っ張った部分がサポート材の下に隠れているため、傷つけないように気を付けてください。
剥がした跡に残る網目状のバリはカッターナイフ等で削ぎ落とします。このバリは多少残っていても機能に影響はありません。
ブラケットの足やステーA,Bの周囲にある薄い平面のバリ (ブリム) は、ペンチや手で大まかに除去した後、残りをカッターナイフや棒やすりで取ります。多少残しても問題ありませんが、ステーBだけは空力パーツであるため、きれいに取ることをお勧めします。

Tips: 産毛のような細い糸引きは、輪ゴムを撫でつけて絡め取ります。

サポート除去方法の補足説明をお読みください

mx5638.hatenablog.com

取り付け手順

1. 冷却ファンの取り付け

冷却ファンを使用する場合、最初にブラケットに取り付けておきます。ブラケット側面に40mmサイズのファンを内向きに固定します。本品付属ねじは一般的な10mm厚のファンを想定した長さです。
使用ねじ類 :
1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個

 

2. 取り付け準備

X68000本体のメイン基板が水平になる方向に、本体を横倒しに置きます。

 

2-1. 初めてPhantomXを取り付ける場合

PhantomXの公式説明のとおりシールド板 (メイン基板表側を覆う薄い金属板) と68000 MPUを除去するためにメイン基板を本体から取り外します。MPUを外したらPhantomX付属の嵩上げソケットを取り付けます。
Tips: 嵩上げソケットを挿す時にメイン基板と金属シャシーの間に厚さ5mm程度の物 (わりばし等) を挟んでおくと、メイン基板の撓みを抑えられます。

そして、このままメイン基板を外した状態でブラケットとPhantomXを取り付けることを推奨します。この場合、3-1.へ進みます。

 

2-2. PhantomXがX68000本体に取り付け済みの場合

MPUの嵩上げソケットを本体に残してPhantomXを取り外し、リロケータ (白基板)、ベースボード (黒基板)、Raspberry Piの三つに分解します。本体メイン基板の3ヶ所のねじ (図示) を外します。この純正ねじは本品では使いません。
Caution: PhantomXの分解時にピンを曲げてしまいやすいので、十分注意してください。一気にピンを抜かずに少しずつ均等に抜く方が安全です。

メイン基板をこのまま本体から取り外さずブラケットとPhantomXを付ける場合は、3-2.へ進みます。メイン基板を取り外して作業する場合は、外して3-1.へ進みます。

 

3. ブラケットの仮固定

関係部品の個体差やメイン基板取り付け状態の誤差を吸収するため、リロケータとベースボードを取り付けるまではブラケットが自由に動けるよう仮固定のままにしておきます。

3-1. メイン基板をX68000本体から取り外した状態の場合

メイン基板が動かないよう、真鍮製ポストやねじ (図示) で金属シャシーに仮留めしておきます。

ブラケットをメイン基板上に置き (下図)、ブラケット右下の足を本品付属ねじ1個で緩く締めます。左上と左下のねじは、メイン基板を本体に戻すまで取り付けません。(ねじの受け側が本体金具のため)。

使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・1個

 

3-2. メイン基板をX68000本体に組み込んだ状態の場合

ブラケットをメイン基板上に置き (下図)、本品付属ねじ3個を緩く締めます。ブラケットを揺すると動くことを確認します。

使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個

 

以後、図中の位置上下左右で表します (図示)。

 

4. リロケータの仮置き、位置調整

リロケータ裏のピンに曲がりがないことを確認します。
リロケータが収まるブラケット内壁の周囲に2本が対になった線が刻まれていることを確認します。そしてリロケータを軽く置き、上側の線が見えてくるようにリロケータの位置を調整します。リロケータのピンがソケットの穴と合えば、リロケータが少し沈み込んで上側の線が見えるようになります。
線が見えない状態ではリロケータがソケットに正しく乗っていないため、ソケットに挿せません。

メイン基板を取り外している場合は、下から覗き込みながらブラケットを僅かに持ち上げたり下げたりしてピンとソケットが合うことを目視確認します。(図示)

 

 

5. リロケータのはめ込み

最大の難所です。リロケータの図示する場所を押してソケットに挿します。最後までピンが刺さってリロケータが水平になり、ブラケットの下側の線が周囲全体で見えていることを確認します。
下側の線が見えない箇所はリロケータが浮いているため、浮いている側を押します。

 

Tips: メイン基板を本体から取り外している場合、基板と金属シャシーの間に厚さ5mm程度の物 (わりばし等) を挟むと基板の撓みが抑えられリロケータを挿しやすくなります。

 

メイン基板を取り外している場合、リロケータはめ込み後にメイン基板をX68000本体へ取り付けます。ブラケット固定ねじ残り2個を取り付け、緩く締めます。
使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・2個

 

7. ベースボードの取り付け

ブラケット右上の角 (矢印) とベースボード右上角を合わせ、ベースボードをリロケータに差し込みます。右2箇所をねじ留めします。ナイロンワッシャーを使用します。
使用ねじ類 :
3) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・2個
4) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・2個

Tips: ねじの頭を舐めないように気を付けて最後まで締めます。その際にブラケットが押されて撓みすぎないように手で押さえると良いかもしれません。

 

8. ブラケットの本固定

ブラケット固定ねじ3個を締めて固定します。相手が薄板のため強く締めすぎないようにします。
Tips: ブラケット右上の四角い足はメイン基板から約1.5mm浮いた状態になります。ブラケットが過度に撓まないようにする支えです。

 

9. ステーAの取り付け

ステーAをねじ3個でブラケット左側に取り付けます。リロケータを基板から引き抜くためのつまみが付いています。
使用ねじ類 :
5) バインド B-1タッピングねじ 3 x 12mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・1個

Tips: ねじを先にステーに通しておいて所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

 

10. ステーBの取り付け

ステーBをねじ2個で右側に取り付けます。ファンの冷却風を整流する役目も持ちます。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個

Tips: ねじを先にステーに通しておいて所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

Caution: ベースボード固定ねじが十分締まっていないと、ステーBがねじの頭に当たって浮いてしまうことがあります。

 

11. Raspberry Piの取り付け

Raspberry Piをベースボードに挿し、ステーA,Bにねじ留めします。ねじ穴が合わない場合はステーA,Bの取り付けを緩めて位置を合わせます。(全く合わない場合はRaspberry Piの差し込み位置を確認します。)
使用ねじ類 :
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・4個 (Pi Zero系は2個)

Tips: 通常は全てのねじ穴を使う必要はなく、半分で十分と思われます。写真は2箇所で固定の例。

 

12. 冷却ファンの配線

冷却ファンの電源を任意の場所から配線します。自己責任で行ってください。

 

取り付け方法は以上です。

 

Raspberry Piだけを取り外す方法

Raspberry PiをステーA,Bに固定しているねじを外すことで、ベースボードやリロケータをブラケット側に残したままRaspberry Piを安全に取り外すことができます。

PhantomX全体をX68000本体から取り外す方法

ブラケット固定ねじ3個を外します。図の斜線の位置を押さえつけてメイン基板が浮かないようにしながら、ステーAのつまみを基板から垂直に引っ張ります。リロケータが嵩上げソケットから抜けて、全体を取り外すことができます。

Caution: ブラケットにリロケータが付いたままX68000本体へ再度取り付けることはできません。リロケータのピンをソケットに差し込むことが非常に困難です。分解して取り付け手順の最初から実施してください。

 

参考:冷却ファンについて

お薦めできる冷却ファンの一例です。風量が十分で騒音も低めです。

1) 40mm Nidec COPAL F410T-05LC 5V/0.08A
2) 40mm XFAN RDL4010S5 5V/0.13A

他、有志の方の検証時データ (Raspberry Pi SoC温度)

3) 40mm PENGLIN 4010 5V
 Pi4B + ヒートシンク + ファンon・・・44 - 46℃  (ファンoff時60℃ up)
4) 30mm (片側固定) YCCFAN YDH3010C05 5V/0.40A
 Pi4B + ヒートシンク + ファンon・・・42.3℃ (ファンoff時61.8℃)
 ただし、爆音でお勧めできないそうです。
 消費電力が大きいと回転数 (≒騒音レベル) も大きいでしょうね。
5) Pi3A+ +ヒートシンク (ファンなし)・・・46℃
 

参考:取り付け・取り外しを繰り返す場合のTips

何度も付け外しを行うことは、自動車の世界で言う「シビアコンディション」での使用なのかもしれません。このような場合、接点復活剤をピンに薄く塗布しておくと潤滑性が増して摩耗や金属疲労が軽減されます。PhantomXの公式では特に言及されていませんので、自己責任で行ってください。本品の開発時にはKURE接点復活スプレーを綿棒でピンに塗布してリロケータの抜き差しを50回以上、ベースボードやRaspberry Piの抜き差しも数十回行いました。接点復活剤のお陰か不明ですが、ピン折損などの問題は起きていません。
ちなみにSDIP丸ピンタイプソケットの抜き差し回数の寿命は、製品によりますが日本製の物でも50回程度が一般的のようです。

 

以上