PhantomX固定ブラケット PXBKT-XVI 説明書

PhantomX固定ブラケット (X68000 XVI専用) 「PXBKT-XVI」の特徴や使用方法を説明する公式マニュアルです。本品はBoothショップのmcafe工房で頒布しています。

 

本品の特徴

・PhantomXを固定して脱落を防止します。
・PhantomXの取り付けミスを予防します。
・リロケータのピン保護のため真っ直ぐ引き抜くつまみが付いています。
・リロケータとベースボードを本体に固定したままRaspberry Piだけを取り外せます。
・40mm冷却ファンを取り付け可能です。
・25mm冷却ファンを取り付け可能ですが、制限があります。(後述)

 

製造方法

FDM方式3Dプリンターによる造形
使用材料:PLA+

 

セットの内容

  1. ブラケット本体
  2. Raspberry Pi Model B系用ステー
  3. Raspberry Pi Zero系用ステー
  4. ねじ、ワッシャー類

 

ねじ、ワッシャー類の内訳

1) バインドねじ M3 x 15mm ・・・3個
2) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・3個
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 12mm ・・・2個
4) バインド B-1タッピングねじ 3 x 8mm ・・・2個
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・4個
7) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・3個
8) ナイロン製ワッシャー M3用 ・・・2個

Tips: ねじの頭が少し平べったいのが「バインド」、丸っこいのが「なべ」です。
「B-1」は、ねじを切り進むための切り欠きがあるタイプのタッピングねじです。
タッピングねじをねじ込む相手は金属よりはるかに弱い樹脂ですので、強く締めすぎると相手側に切ったねじがダメになってしまいます (「ねじがバカになる」)。軽い力で締めて止まったところでやめるようにしてください。

 

注意点

FDM方式3Dプリンターで製造しているため、機械的強度は高いのですが、造形に以下のような欠点があります。バリ (特に裏面)、糸引き (産毛のような細いもの)、積層痕の不揃い、小さな隙間や凹凸、僅かな変形、傷、変色など。機械的機能が損なわれない程度なら出荷対象としています。

 

取り付け手順

1. 冷却ファンを使用する場合、最初にブラケットに取り付けておきます。ブラケット側面に40mmサイズのファンを内向きに固定します。(25mmファンの取り付けは後述)。本品付属ねじは一般的な10mm厚のファンの使用を想定した長さです。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個

 

2. PhantomXを取り付けられる状態にします。
PhantomXがX68000本体に取り付け済みの場合、MPUのソケット(PhantomX付属品)を残してPhantomXを取り外し、リロケータ (白基板)、ベースボード (黒基板)、Raspberry Piの三つに分解します。また、本体メイン基板の固定ねじ3ヶ所 (図示) を取り外します。このねじは使いません。
Caution: PhantomXの分解時にピンを曲げてしまいやすいので、十分注意してください。一気にピンを抜かずに少しずつ均等に抜く方が安全です。
一方、初めてPhantomXを取り付ける場合はPhantomXの説明書を参照し、MC68000 MPUを取り外してPhantomX付属ソケットを取り付けます。また、図の3ヶ所のねじを取り外しておきます。このねじは使いません。

 

3. ブラケットをメイン基板上に置き、本品付属ねじ3個 (図示) を少し締めます。ブラケットがカタカタと動ける状態にしておき、PhantomXのリロケータの取り付けを妨げないようにします。以後、図中の位置を上下左右で表します (図示)。
使用ねじ類 :
1) バインドねじ M3 x 15mm ・・・3個

 

4. リロケータ右下の角をブラケットの干渉箇所 (図示) を避けて上から滑り込ませ、リロケータ上側はブラケット右上の矢印 (図示) の位置を目安にして軽く置きます。まだソケットにピンを刺しません。

 

5. リロケータをソケットに差し込みます。見づらいですが横から覗き込んでピンとソケット穴が合っていることを確認しながら (図示)、慎重にリロケータを押し込みます。このときピンが1ピンずれてしまわないようにブラケットを作ってありますが、多少の余裕を持たせているためピンが穴にはまることを必ず目視してください。(ピンが折れたら最悪です)


ピンの片方の列が浮いたままになりやすいため、ブラケット内面の目印の線 (図示) がちょうど見えてくるまでリロケータを押し込みます。

 

6. 途中まで締めていたブラケット固定ねじ3個を最後まで締めて固定します。相手が薄板のため締めすぎないようにします。

(写真なし)

 

7. 必要な場合はリロケータをブラケットにねじ留めします。リロケータのねじ穴2個を利用します。
使用ねじ類 :
4)
 バインドB-1タッピングねじ 3 x 8mm ・・・2個
8) ナイロン製ワッシャー M3用 ・・・2個
Tips:
リロケータをX68000本体側に残してPhantomXベースボードだけ取り外したい特別な要件があれば、リロケータをねじ留めしておくと便利です。そうでなければ、ねじ留めしない方が便利です。

(写真なし)

 

8. ベースボードを取り付けます。ブラケット左上角の矢印を目安にします。
使用ねじ類 :
2) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・1個
3) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 12mm ・・・2個
7) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・3個

Tips: Raspberry Piの抜き差しに耐えるよう、2個のねじは長いものを使います。

 

9. Raspberry Piとステーを取り付けます。

9-1. Raspberry Pi Model B系 (2B, 3B, 3B+, 4B) の場合

Raspberry Piを先に取り付けて、次に本品の「Model B系用ステー」を取り付けてRaspberry Piを固定します。ステーは出っ張り (つまみ) が右側に来る向きに取り付けます。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個




9-2. Raspberry Pi Zero系 (Zero, Zero WH, Zero2) の場合

本品の「Zero系用ステー」を先に取り付け、次にRaspberry Piを取り付けてステーにねじ留めします。ステーはつまみが右側に来る向きに取り付けます。
使用ねじ類 :
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個
2) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・2個

 

 

9-3. Raspberry Pi Model A系 (3A+) の場合

Raspberry Piだけを取り付けます。(ステー非対応です)。ベースボード右上のねじ穴と市販スペーサーを利用して固定します。

(写真なし)

 

10. 必要に応じて冷却ファンの配線をします。

(写真なし)

 

取り付け方法は以上です。

 

Raspberry Piだけを取り外す方法

ベースボードがブラケットにねじ留めされているため、Raspberry Piを固定しているステーを取り外せばRaspberry Piだけを安全に取り外すことができます。

(写真なし)

 

PhantomX全体をX68000本体から取り外す方法

1. Raspberry Piを付けたまま取り外す場合
ブラケットを本体メイン基板に固定しているねじ3個を外します。次にブラケット上のメインつまみとRaspberry Piステー上にある補助つまみを持ち、主にメインつまみに力をかけて基板から垂直に引っ張り上げます。するとリロケータがソケットから抜けて、ブラケットも含む全体を取り去ることができます。(MPUソケットは抜けません)

2. Raspberry PiとPiステーを取り外してある場合
ステー上の補助つまみの代わりにブラケット下部のノブに指を掛けると、取り外しやすいです。

Caution: ブラケットにリロケータを取り付けたままでX68000本体へ再度取り付けることはお勧めしません。リロケータのピンをソケットに差し込むのが難しいです。分解して上述の取り付け手順で取り付けてください。



25mmファンの取り付け方法

25mmファンは40mmファンに比べて効率が悪く騒音も大きいですが、検証結果では冷却効果はそれなりにあります。使用している方もいらっしゃるため取り付け場所をブラケット上部に作ってあります。取り付けねじは本品に含まれないため用意してください。(40mmファン用ねじの流用はできます)
製造上の都合によりねじ穴は約1mm径の下穴しか開いていませんので、使うねじに合わせてドリルで穴を拡げてください。3mm径のタッピングねじを使う場合、2.5か2.6mmのドリル刃を使います。M3ねじとナットを使う場合は3.0から3.2mmのドリル刃を使います。電動でなくてもピンバイスに咥えれば十分です。
なお、拡張メモリーXM-6BE6APの装着中は、メモリー基板上のCLKIOピンに当たるためファンを取り付けられません。

 

参考:取り付け・取り外しを繰り返す場合のTips

何度も付け外しを行うことは、自動車の世界で言う「シビアコンディション」での使用なのかもしれません。このような場合、接点復活剤をピンに薄く塗布しておくと潤滑性が増して摩耗や金属疲労が軽減されます。PhantomXの公式では特に言及されていませんので、自己責任で行ってください。本品の開発時にはKURE接点復活スプレーを綿棒でピンに塗布してリロケータの抜き差しを50回以上、ベースボードやRaspberry Piの抜き差しも数十回行いました。接点復活剤のお陰か不明ですが、ピン折損などの問題は起きていません。
ちなみに、SDIP丸ピンタイプソケットの抜き差し回数の寿命は、製品によりますが日本製の物でも50回程度が一般的のようです。

 

参考:冷却ファンについて

本品にファンを装着して冷却効果を簡易検証しました。使用ファンとRaspberry Pi 4BのSoC温度の実例です。

1) 40mm Nidec COPAL F410T-05LC 5V/0.08A (¥1500)・・・45℃、騒音聞こえず
2) 40mm XFAN RDL4010S5 5V/0.13A (¥280)・・・45℃、騒音聞こえず
3) 40mm Nidec D04X-05TH 5V/0.16A (¥860)・・・44℃、風切り音あり
4) 25mm PENGLIN 型番不明 5V/0.19A (¥500)・・・49℃、不規則な唸り音あり
5) ファン不使用・・・67℃

条件:室温22℃、チップ貼付ヒートシンク使用、X68000のカバーを閉じた状態

結論:ファン1)がいちばん良いが高価、2)はスペックに比して風量が低いが安価で効果は1)と変わらず良い、3)は風量が段違いに大きいがオーバースペックで煩い (50Ω前後 1/4W以上の抵抗を噛ますと静かになって使える)、4)は騒音が気になり使えない。

 

 

以上です。