【補足】PhantomX固定ブラケット PXBKT-AES説明書

サポート材除去の補足説明

サポート材は3Dプリンターでの造形時に図の橙色部分を支えるために生成されますが、完成後は除去する必要があります。除去すると図のような本体形状が現れます。

ステーBは簡易的な逆翼断面形状です。冷却ファンからの空気を跳ね上げるためです。

カッターナイフ、棒やすり、バリ取りツールなどを活用します。

黒マジックでマークされている箇所は突起が隠れています。突起をペンチで掴んで壊さないよう十分注意します。

ラジオペンチでサポート材を掴んで剥がします。
この写真は隠れていた突起が現れたところです。

大まかに除去しました。ここから先はカッターナイフ1本でも行けますが、お好きな道具を活用してください。

網目状のバリを取ります。

網目の下にある斜め模様はバリ (サポート材) ではありませんので取ってはいけません。

四角い足の底面に薄いサポート材が残っていたら取ります。
この部分はメイン基板から約1.5mm浮かせています。

ステーA/Bのバリ (ブリム) を取ります。ナイフの方が早いですが、バリ取りツールを使うときれいにできます。

ステーBのこの部分は左右ともバリを取ります。(カッターを当てている箇所)

細い糸引きです。

糸引きは輪ゴムを指で転がして絡め取ります。

 

PhantomX固定ブラケット PXBKT-AES 説明書

PhantomXを固定するブラケット (X68000 ACE/EXPERT/EXPERT2/SUPER用) 「PXBKT-AES」の特徴や使用方法を説明する公式マニュアルです。本品はBOOTHショップのmcafe工房で頒布しています。

 

本品の特徴

・PhantomXを固定して脱落を防止します。
X68000メイン基板を本体から取り外さずにPhantomXを取り付けられるかもしれません。(リスクがあります。下記)
・リロケータとベースボードをX68000に固定したままRaspberry Piだけを取り外せます。
Raspberry Piを冷却するための40mmファンを取り付け可能です。
・使用材料はPLA+で、通常のPLA (ポリ乳酸) よりも靭性が高くABSに近い耐衝撃性があります。

注意事項:必ずお読みください

・本品はユーザー様ご自身でサポート材 (3Dプリンター で造形する際に作られる土台) を除去していただきます。

・本ブラケットは、メイン基板を本体に付けたままPhantomXを取り付けられるように留意して制作しました。それでも取り付けの際にPhantomXのリロケータ (白い基板) のピンを目視できないため位置調整が難しく、無理にソケットに押し込もうとするとリロケータのピンを折ってしまうリスクがあります。下記手順を守ってもリロケータの位置調整がうまく行かない場合は、メイン基板を本体から取り外す方法に切り替えてください。

・本品は家庭用FDM方式3Dプリンターで製造しているため、多くの場合造形に以下のような欠点があります。糸引き、積層痕の不揃い、小さな隙間や凹凸、変形、変色、プリンター部品摩耗片の混入など。機械的機能が損なわれない程度なら出荷対象としています。

セットの内容

・ブラケット本体
・ステーA
・ステーB
・ねじ、ワッシャー類

ねじ、ワッシャー類の内訳

1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・6個
4) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・2個
5) バインド B-1タッピングねじ 3 x 12mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・3個

Tips: ねじの頭が少し平たいのが「バインド」、丸っこいのが「なべ」です。
「B-1」は、ねじを切り進むための切り欠きがある強力タイプのタッピングねじです。
Caution: タッピングねじをねじ込む相手は金属よりはるかに弱い樹脂ですので、強く締めすぎないようにします。

必要工具

・プラスドライバー2番 (3mmねじ用)
・プラスドライバー1番 (2.6mmねじ用)
・ラジオペンチ、カッターナイフ、棒やすり等 (サポート材除去に使用)
・輪ゴム (糸引きがある場合に使用)

サポート材の除去方法

ラジオペンチでサポート材を掴んで引き剥がしていきます。黒くマークされた箇所は出っ張った部分がサポート材の下に隠れているため、傷つけないように気を付けてください。
剥がした跡に残る網目状のバリはカッターナイフ等で削ぎ落とします。このバリは多少残っていても機能に影響はありません。
ブラケットの足やステーA,Bの周囲にある薄い平面のバリ (ブリム) は、ペンチや手で大まかに除去した後、残りをカッターナイフや棒やすりで取ります。多少残しても問題ありませんが、ステーBだけは空力パーツであるため、きれいに取ることをお勧めします。

Tips: 産毛のような細い糸引きは、輪ゴムを撫でつけて絡め取ります。

サポート除去方法の補足説明をお読みください

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取り付け手順

1. 冷却ファンの取り付け

冷却ファンを使用する場合、最初にブラケットに取り付けておきます。ブラケット側面に40mmサイズのファンを内向きに固定します。本品付属ねじは一般的な10mm厚のファンを想定した長さです。
使用ねじ類 :
1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個

 

2. 取り付け準備

X68000本体のメイン基板が水平になる方向に、本体を横倒しに置きます。

 

2-1. 初めてPhantomXを取り付ける場合

PhantomXの公式説明のとおりシールド板 (メイン基板表側を覆う薄い金属板) と68000 MPUを除去するためにメイン基板を本体から取り外します。MPUを外したらPhantomX付属の嵩上げソケットを取り付けます。
Tips: 嵩上げソケットを挿す時にメイン基板と金属シャシーの間に厚さ5mm程度の物 (わりばし等) を挟んでおくと、メイン基板の撓みを抑えられます。

そして、このままメイン基板を外した状態でブラケットとPhantomXを取り付けることを推奨します。この場合、3-1.へ進みます。

 

2-2. PhantomXがX68000本体に取り付け済みの場合

MPUの嵩上げソケットを本体に残してPhantomXを取り外し、リロケータ (白基板)、ベースボード (黒基板)、Raspberry Piの三つに分解します。本体メイン基板の3ヶ所のねじ (図示) を外します。この純正ねじは本品では使いません。
Caution: PhantomXの分解時にピンを曲げてしまいやすいので、十分注意してください。一気にピンを抜かずに少しずつ均等に抜く方が安全です。

メイン基板をこのまま本体から取り外さずブラケットとPhantomXを付ける場合は、3-2.へ進みます。メイン基板を取り外して作業する場合は、外して3-1.へ進みます。

 

3. ブラケットの仮固定

関係部品の個体差やメイン基板取り付け状態の誤差を吸収するため、リロケータとベースボードを取り付けるまではブラケットが自由に動けるよう仮固定のままにしておきます。

3-1. メイン基板をX68000本体から取り外した状態の場合

メイン基板が動かないよう、真鍮製ポストやねじ (図示) で金属シャシーに仮留めしておきます。

ブラケットをメイン基板上に置き (下図)、ブラケット右下の足を本品付属ねじ1個で緩く締めます。左上と左下のねじは、メイン基板を本体に戻すまで取り付けません。(ねじの受け側が本体金具のため)。

使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・1個

 

3-2. メイン基板をX68000本体に組み込んだ状態の場合

ブラケットをメイン基板上に置き (下図)、本品付属ねじ3個を緩く締めます。ブラケットを揺すると動くことを確認します。

使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個

 

以後、図中の位置上下左右で表します (図示)。

 

4. リロケータの仮置き、位置調整

リロケータ裏のピンに曲がりがないことを確認します。
リロケータが収まるブラケット内壁の周囲に2本が対になった線が刻まれていることを確認します。そしてリロケータを軽く置き、上側の線が見えてくるようにリロケータの位置を調整します。リロケータのピンがソケットの穴と合えば、リロケータが少し沈み込んで上側の線が見えるようになります。
線が見えない状態ではリロケータがソケットに正しく乗っていないため、ソケットに挿せません。

メイン基板を取り外している場合は、下から覗き込みながらブラケットを僅かに持ち上げたり下げたりしてピンとソケットが合うことを目視確認します。(図示)

 

 

5. リロケータのはめ込み

最大の難所です。リロケータの図示する場所を押してソケットに挿します。最後までピンが刺さってリロケータが水平になり、ブラケットの下側の線が周囲全体で見えていることを確認します。
下側の線が見えない箇所はリロケータが浮いているため、浮いている側を押します。

 

Tips: メイン基板を本体から取り外している場合、基板と金属シャシーの間に厚さ5mm程度の物 (わりばし等) を挟むと基板の撓みが抑えられリロケータを挿しやすくなります。

 

メイン基板を取り外している場合、リロケータはめ込み後にメイン基板をX68000本体へ取り付けます。ブラケット固定ねじ残り2個を取り付け、緩く締めます。
使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・2個

 

7. ベースボードの取り付け

ブラケット右上の角 (矢印) とベースボード右上角を合わせ、ベースボードをリロケータに差し込みます。右2箇所をねじ留めします。ナイロンワッシャーを使用します。
使用ねじ類 :
3) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・2個
4) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・2個

Tips: ねじの頭を舐めないように気を付けて最後まで締めます。その際にブラケットが押されて撓みすぎないように手で押さえると良いかもしれません。

 

8. ブラケットの本固定

ブラケット固定ねじ3個を締めて固定します。相手が薄板のため強く締めすぎないようにします。
Tips: ブラケット右上の四角い足はメイン基板から約1.5mm浮いた状態になります。ブラケットが過度に撓まないようにする支えです。

 

9. ステーAの取り付け

ステーAをねじ3個でブラケット左側に取り付けます。リロケータを基板から引き抜くためのつまみが付いています。
使用ねじ類 :
5) バインド B-1タッピングねじ 3 x 12mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・1個

Tips: ねじを先にステーに通しておいて所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

 

10. ステーBの取り付け

ステーBをねじ2個で右側に取り付けます。ファンの冷却風を整流する役目も持ちます。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個

Tips: ねじを先にステーに通しておいて所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

Caution: ベースボード固定ねじが十分締まっていないと、ステーBがねじの頭に当たって浮いてしまうことがあります。

 

11. Raspberry Piの取り付け

Raspberry Piをベースボードに挿し、ステーA,Bにねじ留めします。ねじ穴が合わない場合はステーA,Bの取り付けを緩めて位置を合わせます。(全く合わない場合はRaspberry Piの差し込み位置を確認します。)
使用ねじ類 :
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・4個 (Pi Zero系は2個)

Tips: 通常は全てのねじ穴を使う必要はなく、半分で十分と思われます。写真は2箇所で固定の例。

 

12. 冷却ファンの配線

冷却ファンの電源を任意の場所から配線します。自己責任で行ってください。

 

取り付け方法は以上です。

 

Raspberry Piだけを取り外す方法

Raspberry PiをステーA,Bに固定しているねじを外すことで、ベースボードやリロケータをブラケット側に残したままRaspberry Piを安全に取り外すことができます。

PhantomX全体をX68000本体から取り外す方法

ブラケット固定ねじ3個を外します。図の斜線の位置を押さえつけてメイン基板が浮かないようにしながら、ステーAのつまみを基板から垂直に引っ張ります。リロケータが嵩上げソケットから抜けて、全体を取り外すことができます。

Caution: ブラケットにリロケータが付いたままX68000本体へ再度取り付けることはできません。リロケータのピンをソケットに差し込むことが非常に困難です。分解して取り付け手順の最初から実施してください。

 

参考:冷却ファンについて

お薦めできる冷却ファンの一例です。風量が十分で騒音も低めです。

1) 40mm Nidec COPAL F410T-05LC 5V/0.08A
2) 40mm XFAN RDL4010S5 5V/0.13A

他、有志の方の検証時データ (Raspberry Pi SoC温度)

3) 40mm PENGLIN 4010 5V
 Pi4B + ヒートシンク + ファンon・・・44 - 46℃  (ファンoff時60℃ up)
4) 30mm (片側固定) YCCFAN YDH3010C05 5V/0.40A
 Pi4B + ヒートシンク + ファンon・・・42.3℃ (ファンoff時61.8℃)
 ただし、爆音でお勧めできないそうです。
 消費電力が大きいと回転数 (≒騒音レベル) も大きいでしょうね。
5) Pi3A+ +ヒートシンク (ファンなし)・・・46℃
 

参考:取り付け・取り外しを繰り返す場合のTips

何度も付け外しを行うことは、自動車の世界で言う「シビアコンディション」での使用なのかもしれません。このような場合、接点復活剤をピンに薄く塗布しておくと潤滑性が増して摩耗や金属疲労が軽減されます。PhantomXの公式では特に言及されていませんので、自己責任で行ってください。本品の開発時にはKURE接点復活スプレーを綿棒でピンに塗布してリロケータの抜き差しを50回以上、ベースボードやRaspberry Piの抜き差しも数十回行いました。接点復活剤のお陰か不明ですが、ピン折損などの問題は起きていません。
ちなみにSDIP丸ピンタイプソケットの抜き差し回数の寿命は、製品によりますが日本製の物でも50回程度が一般的のようです。

 

以上

 

【補足】PhantomX固定ブラケット PXBKT-XVI V2説明書

サポート材除去の補足説明

サポート材は3Dプリンターでの造形時に図の橙色部分を支えるために生成されますが、完成後は除去する必要があります。除去すると図のような本体形状が現れます。

ステーBは簡易的な逆翼断面形状 (ガーニーフラップも付いています 笑)、ステーAの断面は四角形です。
ステーBの片側に浮かせた部分があります。(画像左側)

ラジオペンチ等でサポート材を掴んで剥がしていきます。ステーA/Bは折れやすいため気を付けます。(写真ではステーA/Bが繋がったまま本体のサポート材を剥がそうとしていますが、先にステーを本体から切り離しておく方が良いです)

黒マジックでマークされている箇所は突起が隠れています。ペンチで掴んで壊さないよう十分注意します。

大まかに除去しました。

ここから先はカッターナイフ1本でも行けますが、棒やすりや彫刻刀、バリ取りツールなどお好きな道具を活用してください。

網目状のバリを取ります。

網目の下にある斜め模様はバリ (サポート材) ではありませんので取ってはいけません。

1本の足裏に薄いサポート材が付いています。少しずつめくって行きます。

このように剥がれて、窪みとねじ穴が現れます。

この窪みは、純正RAMボードCZ-6BE2Aの金属ステーの足をブラケットと共締めするためのものです。金属ステーの足の形に合わせて窪みをD型に成形します。カッターの刃を薄いバリの下に入れると取りやすいです。窪みの深さは1mmが目安で、サポート材を剥がした状態で大体1mmになっており多少の凹凸があっても問題ありません。他のRAMボードには金属ステーがないためD型に成形する必要はなく、ねじ穴が現れていれば十分です。

2024年3月以降のロットでは最初からねじ穴が開いており、薄いサポート材も取りやすくなっています。純正RAMボード使用の場合は下図のようにラッパ状の部分を約1mm切除して窪みを完成させます。素材が硬くナイフで一気に切ろうとすると怪我をしやすいため、少しずつ削ることをお勧めします。

窪みの完成。

ステーA/B周囲の薄いバリ (ブリム) を取ります。

ステーBのこの部分も網目状のバリを取ります。片側一か所のみ。

細い糸引きです。

糸引きは輪ゴムを指で転がして絡め取ります。

 

PhantomX固定ブラケット PXBKT-XVI V2説明書

PhantomXを固定するブラケット (X68000 XVI専用) 「PXBKT-XVI V2」の特徴や取り付け、使用方法を説明する公式マニュアルです。本品はBOOTHショップのmcafe工房で頒布しています。

本品の特徴

・PhantomXを固定して脱落を防止します。
・PhantomXの取り付けミスを予防します。
・リロケータとベースボードをX68000に固定したままRaspberry Piだけを取り外せます。
・PhantomXを取り外す時にリロケータのピン保護のため真っ直ぐ引き抜くつまみが付いています。
Raspberry Piを冷却するための40mmファンを取り付け可能です。
・使用材料はPLA+で、通常のPLA (ポリ乳酸) よりも靭性が高くABSに近い耐衝撃性があります。

注意事項:必ずお読みください

・本品はユーザー様ご自身でサポート材 (3Dプリンターで造形する際に作られる土台) を除去していただきます。

・本品(V2)はPhantomXに含まれるリロケータ(白い基板)のピンが短いタイプの専用品で、長いタイプには使用できません。ピンが長いタイプ (ピンの土台の黒いプラスチック部分の高さが約4.5mmのもの) にブラケットを使用したい場合はご連絡ください。

・40MHzクリスタルオシレータ (XTAL3) の装着をICソケット化している場合にオシレータがソケットから浮いていると、ブラケット下面と干渉することがあります。オシレータの足を短く切ることで回避できるようです。

・本品は家庭用FDM方式3Dプリンターで製造しているため、多くの場合造形に以下のような欠点があります。糸引き、積層痕の不揃い、小さな隙間や凹凸、変形、変色、プリンター部品摩耗片の混入など。機械的機能が損なわれない程度なら出荷対象としています。

セットの内容

・ブラケット本体
・ステーA
・ステーB
・ねじ、ワッシャー類

ねじ、ワッシャー類の内訳

1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個
3) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・1個
4) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・5個
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・4個

Tips: ねじの頭が少し平たいのが「バインド」、丸っこいのが「なべ」です。
「B-1」は、ねじを切り進むための切り欠きがある強力タイプのタッピングねじです。
Caution: タッピングねじをねじ込む相手は金属よりはるかに弱い樹脂ですので、強く締めすぎないようにします。
Caution: 短ピン対応ブラケット再配布の方は、ねじ類はV1との差分だけが同封されています。

必要工具

・プラスドライバー2番 (3mmねじ用)
・プラスドライバー1番 (2.6mmねじ用)
・ラジオペンチ、カッターナイフ、棒やすり等 (サポート材除去に使用)
・輪ゴム (糸引きがある場合に使用)

サポート材の除去方法

ラジオペンチでサポート材を掴んで引き剥がしていきます。黒くマークされた箇所は出っ張った部分がサポート材の下に隠れているため、傷つけないように気を付けてください。
剥がした跡に残る網目状のバリはカッターナイフ等で削ぎ落とします。このバリは多少残っていても機能に影響ありません。
ブラケットの足やステーA,Bの周囲にある薄い平面のバリ (ブリム) は、ペンチや手で大まかに除去した後、残りをカッターナイフや棒やすりで取ります。多少残しても問題ありませんが、ステーBだけは空力パーツであるため、きれいに取ることをお勧めします。

Caution: ブラケット左上の足はサポート材でねじ穴が埋まっているため、これを必ず除去する必要があります。また、シャープ純正増設RAMボードCE-6BE2Aの金属製ステーの足とブラケット左上の足を共締めするため、足裏のサポート材を完全に取り去りD字型の窪みを作ります。

Tips: 産毛のような細い糸引きは、輪ゴムを撫でつけて絡め取ります。

サポート除去方法の補足説明も必ずお読みください

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取り付け手順

1. 冷却ファンの取り付け

冷却ファンを使用する場合、最初にブラケットに取り付けておきます。ブラケット側面に40mmサイズのファンを内向きに固定します。本品付属ねじは一般的な10mm厚のファンを想定した長さです。
使用ねじ類 :
1) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個

 

2. 取り付け準備

X68000本体のメイン基板が水平になる方向に、本体を横倒しに置きます。

 

2-1. 初めてPhantomXを取り付ける場合

PhantomXの公式説明のとおりシールド板 (メイン基板表側を覆う薄い金属板) と68000 MPUを除去するためにメイン基板を本体から取り外します。MPUを外したらPhantomX付属の丸ピン嵩上げソケットを取り付けます。
そして、シールド板と68000 MPU以外のものを本体へ戻してねじ留めします。ただしメイン基板の3ヶ所のねじ (図示) は、次項で本品付属品を取り付けます。

 

2-2. PhantomXがX68000本体に取り付け済みの場合

MPUの嵩上げソケットを本体に残してPhantomXを取り外し、リロケータ (白基板)、ベースボード (黒基板)、Raspberry Piの三つに分解します。本体メイン基板の3ヶ所のねじ (図示) を外します。この純正ねじは本品では使いません。
Caution: PhantomXの分解時にピンを曲げてしまいやすいので、十分注意してください。一気にピンを抜かずに少しずつ均等に抜く方が安全です。

 

3. ブラケットの仮固定

ブラケットをメイン基板上に置き、本品付属ねじ3個 (図示) を緩く締めます。ブラケットを揺すると動くことを確認します。
以後、図中の位置上下左右で表します (図示)。

使用ねじ類 :
2) バインドねじ M3 x 12mm ・・・3個

Caution: 関係部品の個体差やメイン基板取り付け状態の誤差を吸収するため、リロケータとベースボードを取り付けるまではブラケットが自由に動けるよう仮固定のままにしておきます。

 

4. リロケータの仮置き、位置調整

リロケータ裏のピンに曲がりがないことを確認します。
ブラケット内面の「上」部分に2本が対になった線が刻まれていることを確認します。そしてリロケータを上から滑り込ませます。(右下の角がブラケットの干渉箇所 (図示) を避けるように) 

リロケータ下面のピンが嵩上げソケットの穴に軽く置かれるよう、リロケータとブラケットの位置を互いに調整します (まだソケットに挿しません)。右から覗き込むとピンとソケットを目視できます。

調整がうまく行けば上下2本の線の内、上の線が見えるようになるはずです。

 

5. リロケータのはめ込み

横から覗き込みピンとソケット穴が合っていることを確認しながら、慎重にリロケータを押してソケットに挿します。最後までピンが刺さってリロケータが水平になり、ブラケットの下側の線が全て見えていることを確認します。

 

6. ベースボードの取り付け

ベースボード左上の角をブラケット左上の矢印 (図示) の位置に合わせ、ベースボードをリロケータに差し込みます。右下の一か所 (図示) をねじで留めます。ナイロンワッシャーを使用します。
使用ねじ類 :
3) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・1個
4) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・1個

Tips: ねじの頭を舐めないように気を付けて最後まで締めます。
Caution: 左2個のねじ穴は使用しません。

 

7. ブラケットの本固定

仮固定だったブラケットをねじ3個 (図示) を締めて本固定します。
Caution: 相手が薄板のため強く締めすぎないようにします。
Tips: ブラケット右上の四角い足はメイン基板から約1.5mm浮いた状態になります。ブラケットが過度に撓まないようにする支えです。

 

8. ステーAの取り付け

ステーAをねじ2個でブラケット左側に取り付けます。Raspberry Piの土台になります。
使用ねじ類 :
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個

Tips: ねじを先にステーに通しておいて所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

 

9. ステーBの取り付け

ステーBをねじ2個で右側に取り付けます。ファンの冷却風を整流する役目も持ちます。
使用ねじ類 :
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個

Tips: ねじを先にステーに通しておいてから所定の位置へステーを置くと、ねじを落とす事故を防ぎやすいです。

Caution: ベースボード固定ねじが十分締まっていないと、ねじの頭が当たりステーBが浮いてしまいます。写真は正しい状態。

 

10. Raspberry Piの取り付け

Raspberry Piをベースボードに挿し、ステーA,Bにねじ留めします。ねじ穴が合わない場合はステーA,Bの取り付けを緩めて位置を合わせます。(全く合わない場合はRaspberry Piの差し込み位置を確認します)
使用ねじ類 :
4) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・4個 (Pi Zero系は2個)
Tips: 通常は全てのねじ穴を使う必要はなく、半分で十分と思われます。写真は2箇所で固定の例。

 

11. 冷却ファンの配線

冷却ファンの電源を任意の場所から配線します。自己責任で行ってください。


取り付け方法は以上です。

 

Raspberry Piだけを取り外す方法

Raspberry PiをステーA,Bに固定しているねじを外すことで、ベースボードやリロケータをブラケット側に残したままRaspberry Piを安全に取り外すことができます。

PhantomX全体をX68000本体から取り外す方法

ブラケット固定ねじ3個を外します。ブラケット上部のつまみを持ち、メイン基板から垂直に引っ張ります。リロケータが嵩上げソケットから抜けて、全体を取り外すことができます。(嵩上げソケットは抜けません)

Caution: ブラケットにリロケータが付いたままX68000本体へ再度取り付けることはお勧めしません。リロケータのピンをソケットに挿すことが困難なため、分解して取り付け手順の最初から実施してください。

参考:取り付け・取り外しを繰り返す場合のTips

何度も付け外しを行うことは、自動車の世界で言う「シビアコンディション」での使用なのかもしれません。このような場合、接点復活剤をピンに薄く塗布しておくと潤滑性が増して摩耗や金属疲労が軽減されます。PhantomXの公式では特に言及されていませんので、自己責任で行ってください。本品の開発時にはKURE接点復活スプレーを綿棒でピンに塗布してリロケータの抜き差しを50回以上、ベースボードやRaspberry Piの抜き差しも数十回行いました。接点復活剤のお陰か不明ですが、ピン折損などの問題は起きていません。
ちなみに、SDIP丸ピンタイプソケットの抜き差し回数の寿命は製品によりますが日本製の物でも50回程度が一般的のようです。

 

以上

 

PhantomX固定ブラケット PXBKT-XVI 説明書

PhantomX固定ブラケット (X68000 XVI専用) 「PXBKT-XVI」の特徴や使用方法を説明する公式マニュアルです。本品はBoothショップのmcafe工房で頒布しています。

 

本品の特徴

・PhantomXを固定して脱落を防止します。
・PhantomXの取り付けミスを予防します。
・リロケータのピン保護のため真っ直ぐ引き抜くつまみが付いています。
・リロケータとベースボードを本体に固定したままRaspberry Piだけを取り外せます。
・40mm冷却ファンを取り付け可能です。
・25mm冷却ファンを取り付け可能ですが、制限があります。(後述)

 

製造方法

FDM方式3Dプリンターによる造形
使用材料:PLA+

 

セットの内容

  1. ブラケット本体
  2. Raspberry Pi Model B系用ステー
  3. Raspberry Pi Zero系用ステー
  4. ねじ、ワッシャー類

 

ねじ、ワッシャー類の内訳

1) バインドねじ M3 x 15mm ・・・3個
2) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・3個
3) バインド B-1タッピングねじ 2.6 x 12mm ・・・2個
4) バインド B-1タッピングねじ 3 x 8mm ・・・2個
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・4個
7) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・3個
8) ナイロン製ワッシャー M3用 ・・・2個

Tips: ねじの頭が少し平べったいのが「バインド」、丸っこいのが「なべ」です。
「B-1」は、ねじを切り進むための切り欠きがあるタイプのタッピングねじです。
タッピングねじをねじ込む相手は金属よりはるかに弱い樹脂ですので、強く締めすぎると相手側に切ったねじがダメになってしまいます (「ねじがバカになる」)。軽い力で締めて止まったところでやめるようにしてください。

 

注意点

FDM方式3Dプリンターで製造しているため、機械的強度は高いのですが、造形に以下のような欠点があります。バリ (特に裏面)、糸引き (産毛のような細いもの)、積層痕の不揃い、小さな隙間や凹凸、僅かな変形、傷、変色など。機械的機能が損なわれない程度なら出荷対象としています。

 

取り付け手順

1. 冷却ファンを使用する場合、最初にブラケットに取り付けておきます。ブラケット側面に40mmサイズのファンを内向きに固定します。(25mmファンの取り付けは後述)。本品付属ねじは一般的な10mm厚のファンの使用を想定した長さです。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個

 

2. PhantomXを取り付けられる状態にします。
PhantomXがX68000本体に取り付け済みの場合、MPUのソケット(PhantomX付属品)を残してPhantomXを取り外し、リロケータ (白基板)、ベースボード (黒基板)、Raspberry Piの三つに分解します。また、本体メイン基板の固定ねじ3ヶ所 (図示) を取り外します。このねじは使いません。
Caution: PhantomXの分解時にピンを曲げてしまいやすいので、十分注意してください。一気にピンを抜かずに少しずつ均等に抜く方が安全です。
一方、初めてPhantomXを取り付ける場合はPhantomXの説明書を参照し、MC68000 MPUを取り外してPhantomX付属ソケットを取り付けます。また、図の3ヶ所のねじを取り外しておきます。このねじは使いません。

 

3. ブラケットをメイン基板上に置き、本品付属ねじ3個 (図示) を少し締めます。ブラケットがカタカタと動ける状態にしておき、PhantomXのリロケータの取り付けを妨げないようにします。以後、図中の位置を上下左右で表します (図示)。
使用ねじ類 :
1) バインドねじ M3 x 15mm ・・・3個

 

4. リロケータ右下の角をブラケットの干渉箇所 (図示) を避けて上から滑り込ませ、リロケータ上側はブラケット右上の矢印 (図示) の位置を目安にして軽く置きます。まだソケットにピンを刺しません。

 

5. リロケータをソケットに差し込みます。見づらいですが横から覗き込んでピンとソケット穴が合っていることを確認しながら (図示)、慎重にリロケータを押し込みます。このときピンが1ピンずれてしまわないようにブラケットを作ってありますが、多少の余裕を持たせているためピンが穴にはまることを必ず目視してください。(ピンが折れたら最悪です)


ピンの片方の列が浮いたままになりやすいため、ブラケット内面の目印の線 (図示) がちょうど見えてくるまでリロケータを押し込みます。

 

6. 途中まで締めていたブラケット固定ねじ3個を最後まで締めて固定します。相手が薄板のため締めすぎないようにします。

(写真なし)

 

7. 必要な場合はリロケータをブラケットにねじ留めします。リロケータのねじ穴2個を利用します。
使用ねじ類 :
4)
 バインドB-1タッピングねじ 3 x 8mm ・・・2個
8) ナイロン製ワッシャー M3用 ・・・2個
Tips:
リロケータをX68000本体側に残してPhantomXベースボードだけ取り外したい特別な要件があれば、リロケータをねじ留めしておくと便利です。そうでなければ、ねじ留めしない方が便利です。

(写真なし)

 

8. ベースボードを取り付けます。ブラケット左上角の矢印を目安にします。
使用ねじ類 :
2) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・1個
3) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 12mm ・・・2個
7) ナイロン製ワッシャー M2.6用 ・・・3個

Tips: Raspberry Piの抜き差しに耐えるよう、2個のねじは長いものを使います。

 

9. Raspberry Piとステーを取り付けます。

9-1. Raspberry Pi Model B系 (2B, 3B, 3B+, 4B) の場合

Raspberry Piを先に取り付けて、次に本品の「Model B系用ステー」を取り付けてRaspberry Piを固定します。ステーは出っ張り (つまみ) が右側に来る向きに取り付けます。
使用ねじ類 :
6) なべ B-1タッピングねじ 3 x 16mm ・・・2個




9-2. Raspberry Pi Zero系 (Zero, Zero WH, Zero2) の場合

本品の「Zero系用ステー」を先に取り付け、次にRaspberry Piを取り付けてステーにねじ留めします。ステーはつまみが右側に来る向きに取り付けます。
使用ねじ類 :
5) なべ B-1タッピングねじ 3 x 10mm ・・・2個
2) バインドB-1タッピングねじ 2.6 x 8mm ・・・2個

 

 

9-3. Raspberry Pi Model A系 (3A+) の場合

Raspberry Piだけを取り付けます。(ステー非対応です)。ベースボード右上のねじ穴と市販スペーサーを利用して固定します。

(写真なし)

 

10. 必要に応じて冷却ファンの配線をします。

(写真なし)

 

取り付け方法は以上です。

 

Raspberry Piだけを取り外す方法

ベースボードがブラケットにねじ留めされているため、Raspberry Piを固定しているステーを取り外せばRaspberry Piだけを安全に取り外すことができます。

(写真なし)

 

PhantomX全体をX68000本体から取り外す方法

1. Raspberry Piを付けたまま取り外す場合
ブラケットを本体メイン基板に固定しているねじ3個を外します。次にブラケット上のメインつまみとRaspberry Piステー上にある補助つまみを持ち、主にメインつまみに力をかけて基板から垂直に引っ張り上げます。するとリロケータがソケットから抜けて、ブラケットも含む全体を取り去ることができます。(MPUソケットは抜けません)

2. Raspberry PiとPiステーを取り外してある場合
ステー上の補助つまみの代わりにブラケット下部のノブに指を掛けると、取り外しやすいです。

Caution: ブラケットにリロケータを取り付けたままでX68000本体へ再度取り付けることはお勧めしません。リロケータのピンをソケットに差し込むのが難しいです。分解して上述の取り付け手順で取り付けてください。



25mmファンの取り付け方法

25mmファンは40mmファンに比べて効率が悪く騒音も大きいですが、検証結果では冷却効果はそれなりにあります。使用している方もいらっしゃるため取り付け場所をブラケット上部に作ってあります。取り付けねじは本品に含まれないため用意してください。(40mmファン用ねじの流用はできます)
製造上の都合によりねじ穴は約1mm径の下穴しか開いていませんので、使うねじに合わせてドリルで穴を拡げてください。3mm径のタッピングねじを使う場合、2.5か2.6mmのドリル刃を使います。M3ねじとナットを使う場合は3.0から3.2mmのドリル刃を使います。電動でなくてもピンバイスに咥えれば十分です。
なお、拡張メモリーXM-6BE6APの装着中は、メモリー基板上のCLKIOピンに当たるためファンを取り付けられません。

 

参考:取り付け・取り外しを繰り返す場合のTips

何度も付け外しを行うことは、自動車の世界で言う「シビアコンディション」での使用なのかもしれません。このような場合、接点復活剤をピンに薄く塗布しておくと潤滑性が増して摩耗や金属疲労が軽減されます。PhantomXの公式では特に言及されていませんので、自己責任で行ってください。本品の開発時にはKURE接点復活スプレーを綿棒でピンに塗布してリロケータの抜き差しを50回以上、ベースボードやRaspberry Piの抜き差しも数十回行いました。接点復活剤のお陰か不明ですが、ピン折損などの問題は起きていません。
ちなみに、SDIP丸ピンタイプソケットの抜き差し回数の寿命は、製品によりますが日本製の物でも50回程度が一般的のようです。

 

参考:冷却ファンについて

本品にファンを装着して冷却効果を簡易検証しました。使用ファンとRaspberry Pi 4BのSoC温度の実例です。

1) 40mm Nidec COPAL F410T-05LC 5V/0.08A (¥1500)・・・45℃、騒音聞こえず
2) 40mm XFAN RDL4010S5 5V/0.13A (¥280)・・・45℃、騒音聞こえず
3) 40mm Nidec D04X-05TH 5V/0.16A (¥860)・・・44℃、風切り音あり
4) 25mm PENGLIN 型番不明 5V/0.19A (¥500)・・・49℃、不規則な唸り音あり
5) ファン不使用・・・67℃

条件:室温22℃、チップ貼付ヒートシンク使用、X68000のカバーを閉じた状態

結論:ファン1)がいちばん良いが高価、2)はスペックに比して風量が低いが安価で効果は1)と変わらず良い、3)は風量が段違いに大きいがオーバースペックで煩い (50Ω前後 1/4W以上の抵抗を噛ますと静かになって使える)、4)は騒音が気になり使えない。

 

 

以上です。

 

X68000 FDDメンテナンス方法

ツインタワー型(マンハッタンシェイプ)X68000フロッピーディスクドライブ (5.25インチ) のメンテナンス方法です。メカの再調整が必要になるような全てを分解することはせずに、クリーニング、電解コンデンサーの交換、グリスアップを行います。

電子回路の基板は複数のタイプがありますが、メカ部分の作りは初代X68000用から最後のX68030まで大きな違いはありません。横型筐体のX68000 PROのFDDは異なるようですので参考にならないと思います。

 

1. アルミ製のカバーを取り外した初期状態です。

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2. 磁気読み取りヘッドが写真の位置にあることを確認します。
ディスクセンター側 (写真右側) にヘッドがシークされた状態の場合は、ヘッドを外周側へ動かします(方法は次の写真で説明)。そうしないと部品が引っかかってメカの分離が難しいです。

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ヘッドの動かし方です。
一つは、電源 (5Vと12V) を接続することです。ドライブが生きていれば自動的にヘッドが外周のポジションにリセットされます。
それができない場合は手動で動かします。ギヤに噛む金属棒を、一方の手でラジオペンチを広げる方向に使って上下に広げながら、もう片方の手でヘッドを写真の左方向へ動かす方法がやりやすいようです。慎重にギヤの一山ずつ動かしていくと良いです。
他にはラジオペンチを2本使って金属棒を1本ずつ掴んで上下に広げながら左方向へ引っ張る方法もあります。
グリスで滑るので勢い余ってギヤやメカを傷つけないように気をつけます。

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3. 基板に刺さっているフラットケーブルを二箇所外します。引っ張るだけで抜けます。

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外したケーブルを傷つけないよう注意しながら裏側へ抜き取ります。

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X68000初代 (CZ-600C) はもう一箇所ケーブルを抜きます。

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4. ドライブユニット固定用の金具を取り外します。反対側は取り外せません。

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5. 黒いプラ製の部品を取り外します。スプリングの片側を外して、ねじを緩めて外します。スプリングと小さなスペーサーを失くさないように注意します。このねじは長さが専用品になっています。

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6. メカユニットを取り外します。残りのねじ5本を外します。

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7. ユニットを数ミリだけ持ち上げて、矢印の方向に少しずつずらして行きます。

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裏側では、カムのコロを支える金属部分が矢印方向へ外れます。

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ヘッド周りの干渉に気をつけながら、慎重にずらします。

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この辺りまでずらせば、持ち上げて分離できます。

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8. 分離できました。黒いプラ製の細長いスペーサーも外しておきます。向きを覚えておきます。二つは同じ物なので入れ替わっても良いです。

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9. 制御基板を分離します。写真のケーブル2箇所(3本)を外します。元の状態をよく観察しておきます。

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写真のコネクターは薄板を慎重に抜き取ります。

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10. 反対面のケーブルを5箇所外します。

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このコネクターは固いので慎重に外します。ラッチを細いドライバーで押すと良いですが、滑りやすいので怪我に気をつけます。

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11. ねじ4本とスペーサーを外して基板を外すとこのようになります。
分解はここまでにしておきます。これ以上の分解は通常のメンテナンスなら不要ですし、工場で調整済みのマイクロスイッチ固定位置やモーターの軸が狂うことにつながります。

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ねじや細かい部品は、このような単位で六つに整理しておけば区別できます。ドライブ1台分です。

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12. メカと基板を清掃します。
最初にピンセットで大きな埃の塊を丁寧に取り去っておき、綿棒やティッシュキムワイプなどで全体を乾拭きしていくのがおすすめの方法です。通常はこれで十分に綺麗になります。古くなったグリスも拭き取ります。
アルコールの使用は埃を十分に取ってからにしないと拭き跡が残ります。エアダスターは埃を奥に吹き込んでしまいますのでおすすめしません。

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モーター基板とメカの隙間は綿棒を差し込んで乾拭きします。ベビー用の細い綿棒も役立ちます。

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このような隠れた部分やローラーの周りに埃が溜まっています。ピンセットや綿棒で丁寧に埃を取ります。

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磁気ヘッドを持ち上げながらアルコールをつけた綿棒で汚れを拭き取ります。

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X68000本体電源ユニットの電解コンデンサー液漏れにより、電解液がケーブルを伝ってFDDの電源コネクター周りを汚していることがあります。そのために制御基板を洗剤で丸ごと洗浄するのも良いですが、天日干しなどで十分に乾燥させる必要があります。

 

13. 電解コンデンサーを交換します。モーター基板は取り外さないまま作業できます。同時に検知用のLEDを清掃します。

数タイプの基板があり、この写真のタイプはC6:0.1μF 50V, C7:22μF 16V, C8:0.47μF 50V です。

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C17, C19 100μF 16V は他の部品とは反対の面に付いています。

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C10, C24, C26, C2x(番号が隠れて見えませんでした)  10μF 16V x4個です。

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通常サイズの電解コンデンサーでも寝かせれば取り付けられます。
緑の丸で示すLEDの汚れを落としておきます。

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0.1μFと0.47μFの電解コンの手持ちがなく、積層セラミックコンデンサーを使いました。これでも問題なく動作しています。
緑の丸で示すLEDを拭いて汚れをとります。

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X68000初代のFDD
100μF 16V x4
22μF 16V x5
10μF 10V x1
1μF 50V x1
1μF 50V バイポーラ x1

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同じく初代のFDD  10μF 16V x3

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別のタイプの基板です。部品番号も極性も表示されていません。コンデンサーを取り外す前に静電容量と極性の向きをメモしておきます。
100μF 16V x1
22μF 16V x1
10μF 16V x1
1μF 50V バイポーラ x1

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別タイプ基板の部品面です。コンデンサー交換後。

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14. 緑で示す穴は光センサー (フォトダイオード) がありますので、埃などの汚れを取ります。
青で示す箇所にはグリスを塗ります。先に劣化したグリスを綿棒で拭き取ります。

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15. 他のグリスアップ箇所も古いグリスをできるだけ拭き取っておきます。そして手にグリスが付いて塗り広げてしまわないように新しいグリスを塗るのは後回しにして組み立てます。
基板を取り付けてケーブルを接続します。
黒く細長いスペーサー2個を乗せます。

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16. この位置にメカを乗せて数ミリ浮かせながら矢印方向にずらして行きます。スペーサーがずれないように注意します。

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17. 裏側です。カムのコロをギヤの上面に乗り上げさせます。ギヤ側面の歯を傷つけないように注意します。乗り上げやすいように金具を裏面から手で押して浮かせると簡単です。

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18. さらにメカをずらして行きます。
オレンジ色の囲みは、出っ張っているバネの端が右に立っている板の(写真上で)左側に来るようにします。板でバネにテンションをかける方向です。
赤の囲みは、丸棒がその下の板に乗り上げて、右の板の曲線状の端面に当たるようにします。

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同時にヘッド周りも矢印のように金属パーツを下に押しながら黒いアームの下をくぐらせます。黒いアームは壊れやすいため注意します。

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19. 上記の3箇所が正しくはまると、このようになります。
メカのベース板が、黒く細長いスペーサーにも綺麗にはまります。難しく感じるかもしれませんが、引っかかっている箇所を少しずつクリアしていけばできます。

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20. 裏側のカムとコロの関係は大体このようになります。カムとギヤにグリスを塗ります。

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21. 黒いプラ部品とスプリングを付けます。バネの力でフロッピーディスクを片側に寄せておくための部品です。
固定するねじを締めすぎるとプラ部品の動きが渋くなりますので、ねじ止め剤(模型用のタミヤ製で十分)を先の方に塗り、ほどほどの力で締めます。スプリングの向きもあるので気をつけます。ねじ止め剤が乾いた後もプラ部品が軽く動くことを確認します。

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22. 外していたフラットケーブルを元に戻します。

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23. ドライブユニット固定用の金具を取り付けます。

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24. 青で示す箇所をグリスアップします。グリスは微量でよく、ゴマ粒1-2個くらいの量を基本にすると良いと思います。ヘッドを動かすスパイラルギヤにはそれなりの量を塗ります。

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25. 光センサーのハウジング (2個) がねじ止めでなく接着されている個体では、接着が弱くなったり剥がれていないかを揺すってみて確認します。
運用中に接着が剥がれてもアルミカバーで押さえられているため脱落することはないと思われますが、メンテナンス作業の際に衝撃で剥がれてしまうことがあります。剥がれた場合はもちろんのこと、予防的に一度剥がして接着し直すこともお勧めします。
接着剤はエポキシ系などの経年に強いものを使用し、ハウジングの四角い部分をベースプレートに接着します。丸い部分は光センサーがあるため、接着剤を付けないようにします。

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剥がれた例です。

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26. アルミ製のカバーを取り付けます。矢印で示す小さいねじは非常にねじ山を舐めやすいため、ねじ止め剤を付けて軽く締めるだけにしておきます。

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27. ドライブ0と1の消耗を均一化するためローテーションすることをお勧めします。
ドライブ番号 (信号名Drive IDとOption ID)を設定するジャンパー2個を移動して0と1を入れ換えます。もろちんX68000本体に組み込む位置も左右を入れ換えます。

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28. ドライブ2台をシャシーに固定する際は写真のようにドライブ1, ドライブ0の順にアルミカバーを上にして重ね、シャシーを被せます。そして、側面のねじを締めるときにシャシーを持ち上げ気味にすることで相対的にドライブが下側に寄るようにします。(ねじ穴の余裕内での事です)
シャシー内でドライブが写真上側に寄るとX68000本体FD挿入口の左側にずれて、フロッピーディスク挿入の時に擦れることがあります。

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以上です。